インターネットがコミュニケーションの道具として世の中に登場して10 年以上が経過した。世界は誰もが簡単に情報を発信できる環境が到来したと言える。
一方、これまでつながらないはずのヒトとヒトがつながることにより生まれるコミュニケーションからは様々な「負の側面」も見えてきた。この負の側面の発生に対しては、制度や法律の設計を通して「負の側面を管理する」ことが行われるであろう。
しかし、私は、制度を作り管理することは必要最小限に留め、ヒトとヒトがつながることによるコミュニケーションが「正の価値」を生み出すことを促進させる道具の開発を急ぐべきだと考える。
第一に、collaboyouと名付けたヒトが持つコミュニケーション力を定量的に証明する道具を開発した。
今後、このcollaboyouを普及させ、「社会で必須とされるコミュニケーション力を自分が持っているという事実」を信頼ある形式でかつ簡易にインターネットを介して発信できるようになる世界の実現を推進したいと考えている。
「せっかく大学院や大学に行っても就職活動に忙しくて大学に行く時間が無い、そして最悪の場合、大学で一生懸命学ぶと好条件の就業機会を失うという日本の大学と学生が抱える古くそして切実な課題の解決に寄与するのである。
日本において社会や企業で活躍する上で最も必要とされる能力は、コミュニケーション力である。日本の主要大企業の経営者から構成される経団連の調査 によれば、企業の人材採用において最重要視される項目は5年連続でコミュニケーション力とされ、この流れは定着したと言える。但し、我々研究チームが「論理コミュニケーション力」と定義するこの種のコミュニケーション力は、予め決められた内容に従い、相手に思いやりを持ってその内容を伝えるという、航空機の客室乗務員の方やホテルのような接客業の方が優れた能力を持つ「ホスピタリティ的なコミュニケーション力」とは異なるということが我々が研究を進める中で明らかになってきた。論理コミュニケーション力をある一定の信頼性の下で証明するのがこのcollaboyouという道具である。
第二に、ロジコミと名付けた誰もが論理的なコミュニケーション力を早期に習得することが出来る道具を開発した。
企業の人事担当者や大学や高校の先生と会話すると、「有名大学の学生、そして有名大学に多くの学生を入学させている進学高の学生は地頭が良い」という言葉が出てくる。コミュニケーションの研究を続ける中で一つのことを発見した。それは、社会で必要とされているコミュニケーション力(我々は、産学官の共同研究においてこの能力を論理コミュニケーション力として詳細定義した)は、俗に言う入試偏差値の間に相関関係が推論される結果である。誤解を恐れずに言えば、偏差値の高い学校に通う学生は、論理コミュニケーション力が高いという発見である。この発見をある学会で発表した際に、我々研究チームは様々な批評を受けた。その主たる批判は、「あなた方は偏差値教育を肯定するのか?」という批判である。
この批評に解決策(=ソリューション)の設計で対抗すべく生まれたのが、短時間で論理的なコミュニケーションを学べる「ロジコミ」という道具である。
開発後は2年間を掛けて効果検証を続けてきたこの「ロジコミ」の特色は、情報システムの設計方法で文章の設計を行ったことにある。これまで頭の中で行ってきたコミュニケーションの設計を必要最小限のルールに従って図面上で行うことで誰でもある一定レベルの論理コミュニケーション力を短時間で習得してもらえるようになった。誤解を恐れずに言えば、偏差値が高くても低くても差異無く、誰もが論理コミュニケーションが高い環境を作るべく開発を進めている道具が「ロジコミ」ということだ。
特に、高校生向けには、ベネッセコーポレーションから共同研究機会を頂き、ロジコミという道具は、「ロジコミBook」という本に編集することができた。その 「ロジコミBOOK」は、下記2 つの主張をする。
「 ロジコミBOOK」は、これまでにない斬新な方法で「書く力」の向上に役立つ道具であり、同時に感想文が苦手な人にとっても、ロジコミは「文章が書ける」と感じかつ 「満足」できる道具である。
この主張の“ 根拠”は、ロジコミ開発センターに記載した。ご覧頂けると幸いである。
※研究開発秘話は、ロジコミBOOKに掲載しています。僕のコラム「Why communication matters so much for us?」をご覧くださいませ。
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